みんなのまちの役割が変化する『まちへん』

応募対象の概要

昨今、増え続ける在宅避難においては、避難者の災害対応力( レジリエンス) が必要とされる。安心安全な在宅避難を推奨しつつ、社会的孤立等の弊害を緩和することを目的に、日常・非日常に関わらず、まちが異なる意味と役割へ自在に変化し、互いに補完し合いながら住民を包摂できるコミュニティデザインが『まちへん』である。

フェーズフリーな性質の概要およびアピールポイント

本取り組みへ参加する事業者は、「食料品店→たべもの保管庫」「銭湯→みんなの水場」「学習塾→こどもフリースペース」等、非常時に派生可能な変化を日常的に表明する。事業所建物や商品等、住民の目に触れる場所で掲示できるステッカー等で可視化し、定期的に住民と企業が企画する減災イベント等を経て地域コミュニティへ日常化させる。また、事業者間でのネットワークは、行政や自治会から推薦された「まちへんリーダー」を中心に形成され、住民ネットワークへと拡充される。まちへんの普及は、非常時にコミュニティで補完し合い住民を包摂できるだけでなく、日常時の共生社会とその地域コミュニティ力を底上げし醸成することにも寄与できる。
日常時 日常時
「まちへん」に登録している事業者が、日常時から、いざ!の時に異なる意味と役割へ自在に変化できることを表明( 見える化) することは、事業者の社会的価値( ブランドイメージ) が創出されることと住民との親近感と結びつきが一層強まる柔らかな価値がある。また具体的で実効性のある日常コミュニティの醸成にも寄与する。
非常時 非常時
非常時に在宅避難を選択した住民が、日常の生活場面で「まちへん」表明を目にしていることは、いざ!の時に、まちへん事業者と繋がる速度を促進し、迅速な気づきと孤立不安を緩和できる。事業者ネットワークが補完し合いながら住民を包摂することで、備えのない人も含んで誰も取り残さず、孤立しない避難生活を実現できる。
カテゴリ
B
被害のレベル
04
プロブレムの種類
活用タイミング
汎用性評価
73 /100点
汎用性

日常時においては、まちを構成するそれぞれの事業の価値の再認識による信頼性の獲得および誰でも参加できる仕組みにより、「Why」と「Who」が高く評価されている。非常時においても、まちを構成する多くの要素を取り込むことにより、様々な課題やタイミング、対象に提案できるため「When」「Why」「Who」の評価が高くなっている。一方、非常時に比べ日常時の汎用性は、一般的なコミュニティとの差が明確でなく、低い評価となっているため、さらに日常時におけるまちの利用シーンを増やす仕組みが期待される。

有効性評価
74 /100点
有効性

まちの様々な事業者が、日常の役割を果たしながら、非常時にできることを表明することで、地域コミュニティのネットワークを活性化させる。特に「非常時QOL」が高く、デザインとしては「機能面」、そして定期的な減災イベント等により「災害想起」や「意識向上」の触発性で評価が高く、普及性の「価値共有」にもつながると言える。各事業者と地域住民の関係性を再構築し、さらにフェーズフリー性を高めて実現するには、常活性での「日常時QOL」と、日常性全般を向上させることが重要となる。

総評

備えることに大きなコストを掛けなくても、まちを構成する要素一つ一つの非常時に役に立つ価値を定義し明確化することによって、結果としてまち全体が備わっている状態を作るというアイデア。単純で誰でもできる仕組みで日常の社会課題解決が図られ、それが日々、災害を想起させるきっかけになり、実際に災害が起きた時に地域が連携できる。まさに、日常時と非常時の壁が存在しないように、地域の人々が連携を図れるところが、評価ポイントである。日常時におけるまちの価値、あるいは地域住民のQOLの向上などの日常性を描けるとより普及しやすくなる。

http://総評
受賞者コメント
『まちへん』は、在宅避難を推奨しつつも孤立化を避けるべく、日常的な備えとして、まちが異なる意味と役割へ自在に変化し、住民を包摂できるデザインです。わたしたちの暮らす社会が、高齢者、妊産婦、乳幼児、障がい者、ペットと飼い主などを、災害弱者にしない/災害弱者を生み出さないために、日常の生活行為の往復とその連続性から醸され高められていく包摂力に注目し、本デザインの着想に至りました。今後さらに、まちの在り方、ひととひとの在り方から、日常と非日常とのフェーズを見つめ直し、自在に補完し合える社会の実現に取り組みたいと思います。
たつのソーシャルインクルージョンプロジェクト
受賞者プロフィール
たつのソーシャルインクルージョンプロジェクト