移動式発電・給電システム「Moving e」

応募対象の概要

Moving e は大容量水素を搭載するトヨタの燃料電池バスと、Hondaの可搬型外部給電器・可搬型バッテリーを組み合わせた移動式発電・給電システムです。すべての機材をバスに積み込んで移動し、移動した先で電気を供給します。Moving eを使って、いつでも・どこでも電気を届ける実証実験を実施しています。

フェーズフリーな性質の概要およびアピールポイント

近年、台風や豪雨などの災害により送電網がダメージを受け、家庭や避難所に電気が届かないという問題が発生しています。Moving eは移動式のシステムであるため、災害時には災害対応の一助として被災地で電力供給を行う一方、平常時にもイベントなどで日常的な活用が可能な“フェーズフリー”のシステムです。具体的には燃料電池バスを電源とし、可搬型外部給電器・可搬型バッテリーを用いてバスから電気を取り出し、電気製品に電気を供給します。災害などによる停電時にはバッテリーに電気を貯め、避難所などの屋内や車内などで電気が使用できます。バス内には仮眠が取れるスペースを作っており、休憩の場所としても活用することができます。
日常時 日常時
自治体や企業などが行う野外食品提供イベント等での仮設店舗・屋台への電力供給、音楽イベントなどでの音響設備、照明・冷暖房装置への電力供給など可能です。発電機とは異なり、排気ガスが出ないため屋内でも使用可能であり、音も静かです。また、バッテリーを入れ替えることで、連続して電力使用が可能です。
非常時 非常時
被災地まで移動し、電力を供給します。大容量バッテリーに電気を貯め、避難所などの屋内や車内などで電気が使用できます。複数のバッテリーを搭載しているため、電気を小分けにして配ることが出来、各ブースで電気を使うことができます。Moving e 一式で50人規模の避難所に3日間電力を供給できます。
カテゴリ
C
被害のレベル
04
プロブレムの種類
活用タイミング
汎用性評価
69 /100点
汎用性

バッテリーの可搬性、バスによる機動性および水素利用による環境性等が、日常時と非常時の汎用性を高めている。非常時、被災地の避難所のみならず、電気を必要とする様々な状況での活用が期待できることから、「Where」「Why」の場所と対応ハザードで高く評価された。全体として日常時より非常時の方が汎用性の高さを評価されているため、イベント等での用途に加え、費用対効果も含めた普段使いの可能性を広げることでさらに汎用性を高めることができる。

有効性評価
68 /100点
有効性

現代社会において、電気は重要なエネルギーであり、非常時においても情報入手から避難所生活までありとあらゆる場面で活躍するものとなる。これを大容量かつ高可搬性で実現しているため「非常時QOL」が高く評価された。次いで、水素とバッテリーというそれぞれの得意技術を組み合わせ、より高い課題解決を行ったイノベーションの好事例として 「開発促進」が評価された。また、ともすればコストとしてとられられてしまう環境(水素)や防災(蓄電池)を組み合わせることによって、新たなバリューに変えらえる可能性が感じられ、「新規創生」の評価にもつながった。

総評

水素による発電機能と可搬型のバッテリーによる給電機能を組み合わせることでフェーズフリー性を見出すことにより、技術の普及性を高める好事例と言える。従来の発電機と比較して、燃料電池は排気ガスがなく、屋内でも利用可能で、環境面での価値が高い。日常時の屋外イベントや非常時の避難生活で、小分けにした電源を運んで活用することができる。バスとバッテリーの小型化で可搬性と機動性を上げることにより、さらに有効性と汎用性のバランスを高めることが期待できる。

http://総評
受賞者コメント
Moving eは2019年の台風15号をきっかけに、平常時でも災害時でも、エネルギーを運び・配り・使っていただきたいというトヨタ・ホンダ共通の想いから、それぞれの強みの技術を持ち寄り構築したシステムです。
Moving eは、大型の燃料電池バスを移動型の発電所とし、移動した先で小さな蓄電器に充電して被災者に電力を提供する“電気のバケツリレー”を行います。実証実験では、災害時だけでなく、日常でも活用いただくフェーズフリーなシステムとして、日常のイベント・災害を想定した訓練の両方で活用いただき、検証を行っています。
トヨタ自動車株式会社・株式会社本田技術研究所
受賞者プロフィール
トヨタ自動車株式会社・株式会社本田技術研究所