はじめに

主催者挨拶

フェーズフリーはまだ、生まれて間もない言葉です。

「フェーズフリーなものってどんなもの?」
「どんなプロダクトが、フェーズフリー性が高いといえるの?」
「サービスやファシリティをフェーズフリーにするって、どういうこと?」
そんな疑問をお持ちのかたも多いことでしょう。

そこで、「フェーズフリー」をわかりやすい形で皆さんに知ってもらうこと、より多くの「フェーズフリー」を皆さんに生み出してもらうこと、さらに、皆さんからの「フェーズフリー」が社会に新しい気づきを生むこと、この3つを目的に「フェーズフリーアワード」を企画しました。

2021年開催の今回が、まさに第1回の「フェーズフリーアワード」です。
たくさんのご応募をお待ちしています。

一般社団法人フェーズフリー協会
代表理事 佐藤 唯行

フェーズフリーが生まれた経緯

「災害は起きるけれど、備えるって難しい。でも、大切な人を絶対に守りたい」
フェーズフリーは、この想いから生まれました。

そもそも「災害」とはなんでしょう、どうして起こるのでしょうか。
「災害」は、「ハザード」と「脆弱性」の出会いにより起こります。「ハザード」とは自然現象である地震や台風など、また、人間の生活を便利にする交通システムや発電設備など、私たちの生きる社会環境そのものでもあります。社会環境すなわち日常生活の中に潜む「脆弱性」を改善することができれば、ハザードが災害にまで発展することはありません。

では、脆弱性を改善するにはどうしたらよいでしょうか。

  • まずは、それぞれのハザードと遭遇したとき、自分や自分の守りたい存在(家族など)に一体どんな困難が起こるか、リアリティをもって思い描くこと
  • 次に、そのイメージに基づいて必要な対処法を調べ、コスト(時間、お金、労力など)をかけて備えをすること

この2つのステップを踏むことで、脆弱性を改善することができます。しかし2つのステップとも、実は簡単なことではありません。

そこで、「平常時」と「災害時」、この2つのPhase(状況・時期)を別々に考えることを、一旦やめてみましょう。なぜなら私たちは常に、「平常時」と「災害時」の2つのPhaseを行き来しながら生活しているからです。そして「脆弱性」という災害の芽は、平常時の私たちの生活の中に、既に存在するからです。
平常時の生活を変えることこそが、実は災害時の被害状況を変えることになるのです。

先ほどお話ししたように、災害時にどんな困難が起こるか、どんなことで困るか、何が必要となるかなどを、平常時においてリアルに思い描くのは難しいことです。
では発想を変えて、次のように考えてみましょう。
私たちが日常使っている、具体的なある一つの商品、ある一つのサービスなどが、どんなふうであったら災害時に便利か?役に立つか?と。
例えば、いつも身につける衣料品が、いざというときに命を守れる、隠れた別の機能を持っていたら。
例えば、いつも通っている施設で、各種インフラが途絶えた状況でも、生活を快適にすることができたら。
こんなふうに、私たちの身の回りにある様々なものが、PhaseとPhaseの間の垣根を越えて、どんな状況でも、その状況に合わせて役に立ち、私たちの命や生活を守ることができたなら。
そうしたら、誰もが自ずと災害時への備えができている状態になります。

このように、「平常時および災害時というPhaseによる制約に縛られない」こと、「Phaseに関係なく役立つ」ことを、「Phase Free フェーズフリー」と名付けました。

コストであり専門的な防災から、バリューであり産業的なフェーズフリーへ

「フェーズフリー」と「防災」とはどちらも、災害による被害を減らし、人々の命や生活を守ることを目指す概念です。ただ「防災」という言葉は、その性質上当然ながら深刻な雰囲気をまといがちで、また専門性が高い面もあります。そのせいか、防災に関する事業やアイデア提案に対して、一般の人が参加しづらくもあります。
その状況をなんとかして、私たち自身の命と生活を守るための重要なことに、今までの「防災」とはどこかちがう形で、私たちみんながもっと関われるようにできないだろうか。入口を広げてあらゆる産業が防災に関わることができたら、今はまだ不可能なことも、もしかして可能にできるのではないか、と考えたのです。

フェーズフリーは参加しやすいプラットフォーム

あらゆる産業(企業や個人)が関わりやすくなるように、「フェーズフリー」は、「防災」が必然的にまとってしまう参加しづらい雰囲気を取り払い、「誰もがもっと前向きな気持ちで、災害と共存しながらも幸せに暮らせる社会をつくる」ことを目指す概念でもあります。
このように「フェーズフリー」は、私たちの命と生活を守る新しいアイデアを生み出すためのシンプルな道しるべであり、またすべての人が参加しやすいプラットフォームでもありたい、と願っています。

フェーズフリーという指針を使って、自分だったらどんな商品がほしいか?どんなサービスがあったらうれしいか?うちの会社だったら何が作れるか?うちの組織のサービスはどんなふうに変えられるか?
こんな切り口で考えたら、新しい発明品を生み出すときのように、楽しいわくわくした気持ちが湧いてきて、多くの人が取り組みやすくなるかもしれません。
そして、誰かが別の誰かのアイデアを気に入って、触発されてまた新しいアイデアを思いつく、そんなよい循環を目指したいのです。
最初はほんの小さな思いつきでも、たくさんの人がそれぞれに育ててくれたら、世界を一変させる革新的なアイデアだって生まれてくるかもしれません。

そんなふうに日々考えているうちに、私たちの心も徐々にフェーズフリーになっていって、いつか、災害時を基準とした発想が平常時においても苦労せずできるようになり、この世界を構成するもののほとんどがフェーズフリーになる日が来るかもしれません。

ご一緒に、フェーズフリーな世界創りに、取り組んでいただけないでしょうか。

フェーズフリーアワードの概要

フェーズフリーアワードとは

フェーズフリーアワードは、「フェーズフリー」のコンセプトによって、「災害による被害が起こりにくい、安心して豊かに暮らせる」社会を実現していくための活動の一つです。
フェーズフリーの活動としては、2019年に「フェーズフリーアクションパートナー」制度および「フェーズフリー認証」制度がはじまり、3つめの活動として、今年2021年にこの「フェーズフリーアワード」がはじめて開催されます。

フェーズフリーアワードは、プロダクト、サービス、ファシリティなどあらゆるものを対象として、フェーズフリーの特性を評価し顕彰します。

また対象は大きく2つに分けられ、

  • すでに世の中に存在するもの = 事業部門
  • まだ具現化されていないアイデア段階のもの = アイデア部門

この両方です。
また、個人、法人、グループや団体等、参加の単位は自由です。

フェーズフリーアワードは、審査と授賞式・シンポジウムの開催により、フェーズフリーの認知度向上をはかり、またフェーズフリーの新たな知見を社会に還元し、災害と共存しながらも安心して豊かに暮らせる社会を目指します。

フェーズフリーアワードは、フェーズフリーの特性の高さを競うことを目的としていません。
フェーズフリーアワードは

  • すでに存在しているフェーズフリーなものを発見すること
  • フェーズフリーの新たな知見を見出すこと
  • フェーズフリーアワードエンブレムを付与したものを社会に送り出すこと
  • さらに、いまだ見つかっていないフェーズフリーのよりよい考え方・取組み方を探ること

これらを目的としています。

フェーズフリーとは

「フェーズフリー」とは、ふだん身のまわりにあるモノやサービスを「日常時」と「非常時」というフェーズ(時間)からフリーにして、いつもともしもに関わらず生活の質を向上させ、私たちの生活や命を守ってくれるものにしようという新しい考え方です。非常時のための特別なものではなく、日常時にも非常時も活用できるモノやサービスを利用することによって、誰もが安心して豊かに暮らせる社会を作りたいという想いから生まれました。
※詳しくは「フェーズフリーコンセプト&ガイド」サイトをご覧ください。