もくちくの森

応募対象の概要

徳島市東沖洲にある旧印刷工場の改修コンペ応募案である。アート、ものづくり、リサイクル、スタートアップ、ツーリズム、フードロスという地域に根付く6つ活動を抽出し、地域循環と活性化を促すネットワークのためのプラットフォームを構築する。そこにフェーズフリーを重ね合せ、災害にも強い地域モデルを目指している。

フェーズフリーな性質の概要およびアピールポイント

既存建物は、印刷工場として物の流れに即した建築のかたちを持っていた。そこでそのかたちを活かしてモノのフローと仕分けをデザインし、場を設えていく。搬入→開梱→タグ付け→仕分け→収納→展開→製作→展示→梱包→搬出というオペレーションは日常絶えず流れ続けており、それが災害時においても共通化されることで災害時のスムーズな連携を育てていく。日々様々なモノや材料が周辺地域からこの場所へ集まってくる。それを元にアート制作が行われ、リサイクル活動が芽生え、ロスフードが減り、美味しい日本の保存食が注目を集めるようになっていく。こうして地域とモノの循環を促す活動が災害時に必要なスキルを持つ地域人を育てていく。
日常時 日常時
周辺工場から選定された再利用可能な廃材やリサイクル材が届けられ、それを使ったアート制作、家具製作また材料販売が行われている。その他にも地域のロスフードを使ったレストランやアートカプセルホテル、ファットバイクを使ったサイクルショップなど、地域との繋がりを強化し、地域を活性化する仕組みを構築していく。
非常時 非常時
日常の活動が非常時にもそのまま有用な活動として機能します。アートは心のケアだけでなく復興の参加を促し、モノづくりのスキルは災害時に即席の設えを可能とします。フードロスネットワークで食べ物をサポートしつつ、ストックフードで炊き出しを行います。アートカプセルホテルは避難所へ運ばれ、再び組み立てられます。
カテゴリ
C
被害のレベル
04
プロブレムの種類
活用タイミング
汎用性評価
69 /100点
汎用性

日頃から地域活性化のプラットフォームとして多くの人々に活用されることが、日常時と非常時の「When」と「Why」で評価を高めている。対象となる人「Who」については日常時の方が広く、アート、ものづくり、リサイクル、スタートアップ、ツーリズム、フードロスなどへの参加が、さらに非常時の避難所、復旧・復興、心のケアにつながることが期待される。旧印刷工場の改修提案として汎用性の高い提案となっている。

有効性評価
62 /100点
有効性

本提案のために抽出された6つの活動(アート、ものづくり、リサイクル、スタートアップ、ツーリズム、フードロス)が、「日常時QOL」を上げ、地域の活性化とネットワークの構築を促す仕組みが「非常時QOL」も高めている。また、新たな空間を創出し、コミュニケーションを生み出すことが、「開発促進」、「新規創生」、「価値共有」の評価につながった。デザイン対する表現も機能面、情緒面で高く評価された。

総評

一つの提案で解決できる地域の活性化や災害解決はないという原点に立ち、深く検討した様々な施策によって、持続可能性を描いている。6つの活動を結びつけることにより、地域循環の拠点として課題解決を通したQOL向上が見込まれる。それぞれの活動の特色を活かすことにより、日常の衣食住に関わる社会課題に取り組みながら、アーティストや起業家が集い、災害時にも人や空間が機能できる仕組みとして期待できる。

http://総評
受賞者コメント
旧印刷工場を災害物資輸送拠点に転換する提案です。エコでアートな新しい地域循環の在り方と、災害時と日常時をバリアなく横断する新たなフェーズフリー建築を目指しました。自然災害と豊かさは表裏一体です。この建築の在り方が、災害大国日本における、豊かで新しい未来を描く一つのモデルになればと思っています。(御手洗龍)
被災可能性の高い場所に災害対策拠点をつくるという条件を真っ直ぐ捉える。災害を非日常とする必要のない心体を楽しみながら作る。2つの日常フェーズが平衡した場づくりを心がけました。(髙橋広樹)
御手洗龍建築設計事務所+かたちとことばデザイン舎
受賞者プロフィール
御手洗龍建築設計事務所+かたちとことばデザイン舎