フェーズフリー個別化フットウェア

応募対象の概要

本アイデアは、フェーズフリーのコンセプトに基づいて開発中のフットウェアである。健康的に歩行を楽しむ日常時と、安全に避難する非常時を架橋すべく、十分なフィット感と機能性を担保する3Dスキャン・3Dプリントによって製造されており、さらに個人の健康情報把握や避難訓練などに活用可能な歩容センサが搭載されている。

フェーズフリーな性質の概要およびアピールポイント

歩行は日常・非常の双方で重要な行為だが、それを支えるフットウェアにおいては、快適さやデザイン性の高い日常使いのものと、安全性能に特化した非常用のものが分断されていた。本アイデアが提案するフットウェアは、3D技術によって意匠や材料の制約を取り払い、快適さと安全性を両立したことで、日常・非常を選ばず利用できるものとなった。さらに、内蔵するセンサが収集する歩行データは、利用者の日常的な健康に資するだけでなく、地図情報と紐づけた避難訓練等にも応用可能であり、「日常の生活で溜めたデータが、非常時に役立つ」という新たな関係性を導きうる。すでに初期的なユーザー実験を実施しており、今後の実現性も高い。
日常時 日常時
3Dスキャンデータに基づく形状設計と3Dプリントによる個別生産が、これまでの規格にとらわれない、個々人の足にぴったりフィットした快適な履き心地や好みに合ったカラーリングを提供する。また、歩容センサがデータを可視化することで、歩幅やスピードなどの情報を日常的に取得し、健康状態の把握等にも貢献する。
非常時 非常時
がれき等の危険物を踏んでもケガに至らない靴底の厚みや、しゃがんで紐を結ばなくてもすぐに履け、かつ長距離歩いても脱げないフィット性が、災害発生時の歩行避難における安全性を向上させる。また、歩容センサを活用した避難訓練等の実施を通じ、非常時の行動意識の改善や、自治体による防災施策なども最適化される。
カテゴリ
C
被害のレベル
03
プロブレムの種類
活用タイミング
汎用性評価
57 /100点
汎用性

歩容センサによる日常時の健康管理、3Dスキャンデータを活用した履き心地の向上などにより日常時の「Why」が高く評価されている。また、データの可視化により、非常時の行動意識を改善し、自治体による防災施策への活用を可能にすることで、非常時の「Why」についても評価が高かった。スマートなオーダーメイドシューズとして、価値を広め、バリエーションを増やすことで、さらに汎用性を高めることが期待される。

有効性評価
57 /100点
有効性

普段の健康管理と履き心地の向上が「日常時QOL」を高めている。また、災害発生時には歩行での避難しやすさと安全性に寄与し、「非常時QOL」を高めている。デザインとテクノロジーの融合による提案で、センシング技術や3Dプリントによる個々のデータ活用とカスタマイズの可能性が「開発促進」と「新規創生」の評価につながった。さらに開発を進め、入手、販売などのアクセス向上を期待したい。

総評

3Dプリンタにより多様な形状を持った一人一人の足に合わせた軽量でフィット感の高いシューズを提供することができる。シューズという概念を超えて、歩行や移動と連動するウェアラブル端末と考えるとその可能性は大きい。常に地面と接し、移動するための推進機関であるフットウェアのIoT化は無限のフェーズフリーの可能性を感じられる。内蔵センサにより歩行データが蓄積されることで、歩き方の改善や歩く意欲向上による日常の健康促進効果の価値は高く、非常時の避難行動にもつながる。

http://総評
受賞者コメント
本アイデアは、3Dプリントを専門とする大学の研究所と、センサを内蔵したフットウェアを開発する企業との共同研究から生み出されたものです。物性や形状の自由度が高い3Dプリントという手法を用いながら、歩行データの蓄積と活用を推進するためのコンセプトとして、平時の快適さと有事の機能性を両立する「フェーズフリー」にたどり着きました。また、3Dプリントは静音・安全・省電力かつ余剰材料(ゴミ)が少なく、日常的な健康状態や環境のセンシングと合わせ、長期的な視点においても地球環境への負担を軽減するものと考えています。
慶應義塾大学SFC研究所 ソーシャル・ファブリケーション・ラボ + 株式会社ORPHE
受賞者プロフィール
慶應義塾大学SFC研究所 ソーシャル・ファブリケーション・ラボ + 株式会社ORPHE